広報ブログ
2020年2月22日
順番

新しい家
50年近く経ったいまでも私の心の中に鮮明に生き続けている
もの心がついたとき6畳2間に台所と風呂場だけの借家に住んでいた
洗面所などなく台所で服を脱いだ 小判のような形をした木の浴槽 釜もガスではなく石炭で湯を沸かしていた
風呂を沸かしていると煙突からの真っ黒い煙が風と一緒にどこかへ流れていく
風呂場の窓をあけ流れる黒い煙に弟とふたり手を振ってよく見送った
真っ赤に燃える石炭のあの匂いが懐かしい
私が小学校1年生なったばかりの頃だった
いつものように夕飯を食べいると おやじが突然『家をたてるぞ』と言いだした
はじめはよく理解できなかったがその建てる家が自分の住む家だとわかった時とてつもなく嬉しかった
大はしゃぎしたのを覚えている
そのはしゃぐ私たちの姿を見るおやじの誇らしげで嬉しそうなあの顔
おやじのそんな顔は初めてみた
お袋も幸せそうな優しい顔をし私たちを見ていたのはついこのあいだのようだ
おやじもお袋もあの頃は若かったなぁ
新しく建てている家は住んでいる借家からすぐ近くだったので毎日学校帰りによった
それが私の日課になっていた
大工の親方が用意してくれた手ぬぐいを首からぶら下げたり頭に巻いたりノコギリで材木を切ったり運んだりと日が暮れるまでやっていた
『仕事の邪魔すんじゃない』
お袋によく怒られたっけなぁ
毎日少しずつ成長していく家の姿はガキの私には心躍る日々だった
豪華でもなく大きくもない小さな普通の家だったがガキの私にはとても大きなお城に思えたものだった
そんな小さな普通の家
自分が成長し家を離れるまでにいろんなことがあった楽しいことも悲しくなることも
でもすべてが いい思い出だ
思い出がたくさん刻まれている家
家ってなんなんだろって聞かれれば
舞台でありアルバムでもあるように思う
それぞれの家にそれぞれのドラマがある
そのドラマが繰り広げられる舞台が家
過ぎたドラマをいち枚いち枚アルバムをめくるように記憶を戻してくれるのが家
私はそんな気がしてならない
自分が家を建てる時
おやじの嬉しそうなあの顔の意味がわかったような気がした
今度は私が子供たちへ思い出づくりをする舞台をつくる番なのだと
そんな子供たちも巣立ちそれぞれ家庭を持つようになった
今度は子供たちが舞台をつくる番だ
いい家つくろう
ジャージー斉藤